子どもが生まれてからというもの、絵本をはじめ子ども向けの本をもう何冊読んだか知れない。
最近読んだもので面白い本があったので今日はその事について書かせていただく。
「バイエル」は実は音楽家の名前
これほどまでに名前を知られていて、実はよく知らない「バイエル」。
私も恥ずかしながらこの本を読むまでバイエルはピアノ教本の名前だと思っていた。
バイエルの次に習う「ツェルニー」や「ブルグミューラ」は子供心になんとなく人の名前だなと思っていたが、「バイエル」も同じで音楽家の名前。
「子供のバイエル」でおなじみのピアノを初めて習う人の為に作られた教科書「バイエルの教則本」はフェルナンド=バイエル(1803~1863)によって作られた。
実は私たちが知らないのも無理はなく、このバイエルに関する伝記も研究書も残されていない。なのでこちらの本は時代背景を元に作られたフィクション。
奇しくも偉大な音楽家と同時期に生きる
伝記と言えば、「ベートーベン」「モーツアルト」「ショパン」など、誰もが知っている顔ぶれが並ぶ。その類い希な才能を持っている音楽家の半生とは異なり、がむしゃらに音楽に向き合い、努力を重ねるが幾度も挫折を繰り返すそんな「バイエル」は私たちに近い存在なのではないか。
どんなに努力しても所詮天才に叶うはずがない。
と、自暴自棄になる場面がいくつもあった。
そこでくじけて音楽を投げ出してしまうのか?
貧乏な農夫の子で音楽しかやって来なかった彼には音楽しか残っていなかった。
とりあえず出来る事「ピアノを教える」ことを始める。
そこで、ピアノを初めて触る人にも分かりやすく、そしてゆっくりと上達のできる「教則本」の製作を余儀なくされた。
他と違う方向から「好きなこと」を追求
自分の努力が報われずどん底に落ちたときに発想の転換をするところが実に面白い。そして時代の変化も追い風となる。
工業技術の発達でこれまで上流階級の人達だけが楽しめたピアノを一般の人々も楽しむようになり、たくさんの音楽家が生徒を指導するようになる。そこで必要になってくるのがそう「教則本」というわけ。
今現在も「子供のバイエル」が存在し、その教則本を元にピアノをスタートする。
ベートーベンやモーツアルトと同じ土俵では戦えなかったが、時代を超えてたくさんの人を支え、愛され、必要とされている。音楽を愛し、その楽しさをどれだけたくさんの人に伝えたか知れない。
それは一人の天才が音楽を世に届けることと同様に価値のあること。
いや、もしかしたらそれ以上かもしれない。
自分の夢に手が届かないかも・・そんな時はこのように少し発想を変えて別の何か出来る事を探ってみるのも夢に近づく方法の一つと気付かせてくれた。